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オフィスの内装制限とは?内容や条件、内装工事時の注意点などを解説

2024.08.05
オフィス内装

オフィス空間を快適にデザインすることは非常に重要ですが、同時に、火災時の安全性を確保するための法的規制にも目を向ける必要があります。

建築基準法では、火災の発生や延焼を防ぎ、避難経路を確保することで、オフィスで働く人々の命を守ることを目的として、特定の条件を満たすオフィスを対象に、使用できる内装材料の種類や性能に制限を設けています。

それが「内装制限」です。

この記事では、オフィスの内装制限の内容や条件、内装工事を行う際の注意点などを、年間500件以上のオフィスのお悩み解決実績を持つ、WAKURINO(ワクリノ)が分かりやすく解説していきます。

 

オフィスの内装制限とは?

オフィスの内装制限とは、建築基準法第35条に基づき、火災時の安全性を確保するために、特定の条件を満たすオフィスの内装材料の使用を制限する規定のことです。

この規定は、不特定多数の人が利用する特殊建築物や、大規模な建築物、火気を使用する室、窓のない居室などを対象としています。

建築基準法第35条では、以下のように定められています。

無窓の居室等の主要構造部) 第三十五条の三 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

引用元:建築基準法

また、消防法でも内装制限に関する規定が定められています。

建築基準法と消防法の内装制限の違いは、主に内装制限の対象が壁全体(消防法)か、一部除外(建築基準法)かになります。

つまり、この2つの規定を遵守し、内装制限の対象となるオフィスでは、定められた防火性能を持つ材料を使用しなければならないということです。

具体的には、不燃材料、準不燃材料、難燃材料の3種類が指定されています。

 

防火性能を持つ材料

内装制限の対象となるオフィスで使用が義務付けられている材料は、火災時の安全性を確保するために、一定の防火性能を持つ必要があります。

ここでは、指定された3種類の防火性能を持つ材料について、それぞれの特徴をくわしく見ていきましょう。

 

不燃材料

不燃材料とは、コンクリート、れんが、石材、ガラス、金属など、火災時に燃焼しない材料のことです。

これらの材料は、火災の発生や延焼を防ぐ上で最も効果的であり、内装制限の対象となるオフィスでは積極的に使用が推奨されています。

ただし、不燃材料は、材料自体に重量があるため、施工には特別な技術と設備が必要となります。

また、コストも他の材料と比べて高くなる傾向があるため、予算とのバランスを考えながら選定する必要があるでしょう。

 

準不燃材料

準不燃材料とは、石膏ボード、セメント板、無機質断熱材などの材料で、一定時間、火炎に耐えることができる性能を持っています。

不燃材料ほどの完全な不燃性はありませんが、火災の延焼を一定時間抑制する効果が期待できます。
準不燃材料は、不燃材料と比べると軽量で施工がしやすいという点がメリットです。

また、コストも比較的抑えられるため、内装制限の対象となるオフィスで広く使用されています。
ただし、準不燃材料を使用する場合は、材料の厚みや施工方法にも注意が必要です。

 

難燃材料

難燃材料とは、木材やプラスチックなどの可燃物に、防火処理を施した材料のことです。

不燃材料や準不燃材料と比べると、防火性能は劣りますが、防火処理を行うことで、材料は着火しにくく、燃えにくい性質を持つようになります。

難燃材料は、不燃材料や準不燃材料と比べると、デザインの自由度が高いという利点があります。
たとえば、木材や布などの素材感を活かしたオフィス空間を演出したい時などによく使われる材料です。

ただし、難燃材料を使用する場合は、材料の防火性能を十分に確認し、適切な施工方法を選ぶ必要があります。

 

複合材の場合は注意

オフィスの内装材料として、複合材を利用する場合もあります。

複合材とは、2種類以上の材料を組み合わせた材料のことです。
複合材の場合、不燃材料とみなされない場合があるので、特に注意が必要です。

たとえば、不燃材料と可燃物を組み合わせた複合材は、不燃材料とはみなされません。

内装制限の対象となるオフィスで複合材を使用する場合は、全ての構成材料が不燃材料、準不燃材料、難燃材料であることを確認する必要があります。

一部に可燃物が使用されていると、内装制限に抵触する恐れがあるので、十分な注意が必要です。

複合材の防火性能を確認するには、材料の構成比率や厚み、施工方法などを総合的に判断する必要があるため、専門家に相談しながら、適切な材料選定と施工を行うことが大切と言えるでしょう。

 

内装制限を受けるオフィスの種類と制限の内容

全てのオフィスが内装制限の対象となるわけではありません。

内装制限を受けるのは、主に以下のようなオフィスです。

  • 特殊建築物(学校、病院、ホテル、百貨店など)
  • 大規模建築物(延べ面積が3,000㎡を超える建築物)
  • 火気使用室(ストーブやコンロなどの火気を使用する室)
  • 無窓居室(採光や換気のための窓がない居室)

これらのオフィスでは、火災時の危険性が高いと考えられているため、内装材料の使用に制限が設けられているのです。

それぞれ、内装制限の対象とされているオフィスの内装制限の内容についてくわしく見ていきましょう。

 

特殊建築物

特殊建築物とは、不特定多数の人が利用する建築物のことです。

具体的には、学校、病院、ホテル、百貨店、劇場、飲食店などが該当します。

これらの建築物では、火災が発生した際に、多数の人命が危険にさらされる可能性があるため、厳しい内装制限が設けられています。

特殊建築物のオフィスでは、居室や廊下、階段などの天井と壁の仕上げに、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられているのです。

これを遵守し、火災の発生や延焼を防ぎ、避難経路を確保することが必要となります。

 

大規模建築物

大規模建築物とは、延べ面積が3,000㎡を超える建築物のことです。

オフィスビルやマンションなどの大規模な建築物では、火災が発生した際に、避難に時間がかかり、被害が拡大する恐れがあります。
そのため、これらの建築物にも内装制限が設けられているのです。

大規模建築物のオフィスでは、天井と壁の仕上げに、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられています。

ただし、スプリンクラー設備が設置されている場合は、壁の仕上げに難燃材料を使用することが認められています。

 

火気使用室

火気使用室とは、ストーブやコンロなどの火気を使用する部屋のことです。
オフィスのパントリーやキッチンスペースなどが該当します。

火気使用室では、火災の発生リスクが高いため内装制限が設けられているのです。

オフィスの火気使用室では、天井と壁の仕上げに、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられており、火気使用設備の周辺は、不燃材料で仕上げることが推奨されています。

 

無窓居室

無窓居室とは、採光や換気のための窓がない居室のことです。
オフィスの会議室やサーバールームなどが該当します。

無窓居室では、火災が発生した際に、煙や熱が籠もりやすく、避難が困難になる恐れがあるため、天井と壁の仕上げに、不燃材料または準不燃材料の使用が義務付けられているのです。

また、無窓居室には、火災時に自動的に作動する排煙設備の設置が求められる場合があります。

 

オフィスの内装制限の緩和のためにできること

ここまで、オフィスの内装制限についてくわしく見てきましたが、実は、一定の条件を満たすことで、制限を緩和することができるのです。

内装制限の緩和措置を適切に活用することで、オフィスの機能性とデザイン性を高めながら、火災時の安全性も確保することが可能となります。

以下では、オフィスの内装制限の緩和措置について、具体的な方法と注意点を解説していきます。

 

警報設備とスプリンクラーの設置

オフィスに自動火災報知設備とスプリンクラー設備を設置することで、内装制限を緩和することができます。

ただし、警報設備とスプリンクラー設備の設置による緩和措置は、一定の条件を満たしていないと適用されない点に注意が必要です。

自動火災報知設備は、火災の発生を早期に検知し、警報を発する設備のことであり、これがあることにより迅速な避難が可能です。

一方、スプリンクラー設備は、火災時に自動的に作動し、水を噴霧する設備のことであり、消火や延焼防止に効果を発揮します。

これらの設備が設置されている場合、壁の仕上げに難燃材料を使用することが認められるため、内装のデザインの幅が広がります。

ただし、設備導入には、一定の費用と工事期間が必要となるため、予算や時間と照らし合わせて、慎重な検討が必要です。

 

天井の高さが6m以上

天井の高さが6m以上あるオフィスでは、天井の仕上げに難燃材料を使用することができます。
天井が高い空間では、火災時の煙や熱の影響を受けにくいため、その分内装制限が緩和されているのです。

ただし、この緩和措置が適用される天井の高さの場合であっても、壁の仕上げには、不燃材料または準不燃材料を使用する必要があります。

天井と壁の材料選定には、デザインと防火性能のバランスを考慮しながら、慎重に検討することが重要です。

 

天井の仕上げを準不燃材料で行う

天井の仕上げを準不燃材料で行うことで、壁の仕上げに難燃材料を使用することができます。
ただし、天井の下地材には不燃材料または準不燃材料が使われていなければなりません。

この緩和措置により天井の仕上げに準不燃材料を使用できれば、壁のデザインの自由度が高まります。

また、壁に難燃材料を使用できるため、木材やファブリックなどを活用した温かみのある空間づくりが可能となるのです。

ただし、準不燃材料の選定と施工には、専門的な知識と技術が必要となるので、必ず専門家と使用する材料について検討を行うようにしましょう。

 

柱や梁(はり)の面積が床面積の10分の1になるように設計

オフィスの柱や梁の面積が、床面積の10分の1以上になるように設計することで、内装制限を緩和することができます。

ただし、柱や梁の仕上げには、不燃材料または準不燃材料を使用しなければなりません。

柱や梁の分、オフィスの面積が狭くなってしまうというデメリットはあるものの、それらを効果的に配置することで、火災時の延焼の抑制や、避難経路の確保にもつながります。

また、柱や梁を意匠的に活用することで、オフィス空間のデザイン性を高めることも可能です。

構造計算や施工には、専門的な知識と技術が必要となるため、専門家と相談しながら慎重に検討を行いましょう。

 

オフィスの内装制限に違反したらどうなる?罰則は?

オフィスの内装制限は、法律で定められた重要な規定です。
万が一、内装制限に違反した場合、どのような罰則が科せられるのでしょうか。

建築基準法第98条〜第107条で罰則について規定されていますが、要約すると次の通りです。

  • 違反した個人:懲役3年以下または300万円以下の罰金
  • 違反した法人:1億円以下の罰金

内装制限への違反は、単に罰則を受けるだけでなく、火災時の安全性を大きく損なう行為でもあります。
オフィスで働く人々の生命を守るためにも、内装制限を遵守することが重要なのです。

 

オフィス内装を変える場合は必ず内装制限についても確認しよう!

オフィスの内装を変更する際は、デザインや機能性だけでなく、内装制限への適合性も十分に確認する必要があります。

特に、特殊建築物や大規模建築物、火気使用室、無窓居室などに該当するオフィスでは、内装制限の対象となる可能性が高いため、注意が必要です。

内装制限への対応を誤ると、思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。

たとえば、内装材料の選定を誤り、制限に適合しない材料を使用してしまった場

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この記事を書いた人

ワクリノ編集部スタッフ
働き方の進化をコンセプトに、オフィス改善のコンセプト設計から、効率的な運用設計、レイアウトプランニングなど、オフィスの新しい”働きやすさ”と“生産性の向上”を創造し提案していきます。

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