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オフィスの内装工事費用は減価償却が可能!計算方法や仕訳について解説

2025.03.07
RPA・業務効率化

オフィスの内装工事には多額の費用がかかるため、適切な会計処理を行い、税務上のメリットを最大限に活かすことが求められます。

また、オフィスの内装工事費用は減価償却の対象となるため、耐用年数や勘定科目の分類を正しく理解することが重要です。

本記事では、オフィスの内装工事費用の減価償却の仕組みや計算方法、具体的な仕訳方法について詳しく解説します。

 

オフィスの内装工事費用は減価償却できる

オフィスの内装工事にかかる費用は、減価償却の対象です。

減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少していく資産について、取得費用を一度に経費として計上するのではなく、法定耐用年数に応じて分割して費用計上する会計処理のことです。

事業で使用する建物や設備などの固定資産は長期間にわたって使用されるため、費用を一括で計上するのではなく、計画的に配分することで財務上のバランスを保つことができます。

 

減価償却における耐用年数とは

減価償却における耐用年数は、資産の使用可能な期間を国が定めたものであり、法的耐用年数とも呼ばれます。

各資産が一般的にどの程度の期間にわたって使用されるかを基準として決められていますが、実際の使用状況やメーカーが示す耐久年数とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。

例えば、設備や建物の寿命が実際にはもっと長くても、税務上の処理としては国が定めた耐用年数に従う必要があります。

具体的な耐用年数は、財務省令に基づく「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって分類されています。

資産の種類や構造、用途ごとに耐用年数が決められており、事業者は自社の資産がどの区分に該当するかを確認することで、適用すべき耐用年数を把握できます。

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所は耐用年数50年で、建築資材や用途によって異なる基準が適用されます。

内装工事にかかる費用を減価償却する場合は、工事内容に応じた耐用年数を判断し、その期間にわたって定額法を用いて経費を計上するのが一般的です。

定額法では、取得費用を耐用年数で均等に割り、毎年同じ金額を経費として計上していくため、財務管理の安定性が確保しやすくなります。

オフィスの内装工事に関しても、壁や床の仕上げ、建具の設置など、それぞれの工事内容に応じた耐用年数を正しく適用し、適切に減価償却を行うことが求められます。

 

内装工事における耐用年数と勘定科目

オフィスや事務所で行う内装工事は、形として存在する資産ではありませんが、減価償却の対象です。

そのため、税務上の処理として耐用年数が定められており、一般的に10年から15年の範囲で適用されます。

例えば、内装工事に500万円の費用がかかった場合、耐用年数を10年とすると、500万円を10年間にわたって均等に経費計上します。

この場合、1年あたりの減価償却費は50万円となり、毎年この金額を損益計算書の減価償却費として計上します。

なお、税務上の減価償却は一定のルールに基づいて行う必要があり、その年の利益状況に応じて計上額を自由に増減させることはできません。

例えば、500万円のうち300万円を一括で計上し、翌年以降の計上額を減らすといった処理は認められていません。

逆に、利益が少ない年に減価償却費を10万円だけ計上することもできず、法定耐用年数に従って均等に処理する必要があります。

 

自社所有と賃貸で耐用年数の考え方が異なる

自社所有と賃貸で耐用年数の考え方が異なるため、事前に確認しておきましょう。

 

自社所有の場合

自社所有の建物では、新築と中古で耐用年数の考え方が異なります。

新築の場合は、建物の構造や用途に応じた法定耐用年数が適用されます。

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造で木造の内装部分が3割以上を占める飲食店の床の内装工事を行った場合、耐用年数は34年です。

一方、中古物件を取得している場合は、使用可能期間をもとに耐用年数を算出します。

法定耐用年数から経過年数を差し引き、その経過年数の20%を加えた数値が耐用年数です。

例えば、法定耐用年数が35年の建物で築15年が経過している場合、(35年 − 15年) + (15年 × 20%) という計算式で耐用年数を求めます。

ただし、築年数がすでに法定耐用年数を超えている場合は、法定耐用年数の20%をかけた年数を耐用年数として計算します。

また、算出した数値に1年未満の端数が出た場合は切り捨てとなり、計算結果が2年未満であれば最低2年の耐用年数が適用されます。

中古建物の内装工事費がその資産価格の50%以上に達する場合は、新築の建物と同じく法定耐用年数を適用します。

 

賃貸の場合

賃貸物件の内装工事を行う場合、国税庁の「他人の建物に対する造作の耐用年数」で定められた耐用年数を使用します。

内装工事を実施した建物の耐用年数や用途、使用される素材などを考慮し、合理的に耐用年数を見積もることが求められています。

そのため、明確な年数が一律に決まっているわけではありませんが、一般的には10〜15年の範囲で設定されることが多いとされています。

また、下記の条件を満たしている場合は、賃貸契約の期間を耐用年数として適用できます。

  • 賃貸契約に定められた賃借期間があること
  • 契約の更新ができないこと
  • 内装工事の費用に関して有益費請求や買取請求ができないこと

なお、内装工事の内容によっては、建物の付属設備に該当する場合もあります。

例えば、冷暖房設備の設置工事などは建物の付属設備として分類され、それぞれの設備に対応する法定耐用年数を適用する必要があります。

 

オフィスの内装工事費用を減価償却する際の注意点

オフィスの内装工事費用を減価償却する際は、次の注意点を押さえましょう。

 

改修工事は内容によって計上する対象が異なる

工事の内容によって計上方法が異なる点に注意が必要です。

内装工事は、単なる修繕ではなく、資産価値の向上や耐久性の向上を目的として行われることが多いため、場合によっては固定資産として計上されます。

一方で、維持管理や原状回復を目的とした工事は、修繕費として必要経費に計上できます。

例えば、オフィスの耐震性を向上させるために建物に避難階段を設置する工事や、用途変更に伴うレイアウトの大幅な変更は、固定資産として扱われます。

さらに、機器の一部をより高性能なものに交換する工事も、資産の価値を向上させるため、固定資産に該当します。

このような工事は長期間にわたって資産として使用されるため、減価償却の対象です。

一方で、設備の移設や機械装置の移動などは、原状回復や日常的なメンテナンスに該当するため、修繕費として扱われることが一般的です。

建物の一部を改修することで機能を維持したり、敷地の水はけを改善するために砂利や砕石を敷いたりすることは、維持管理の範囲内とみなされ、必要経費として計上できます。

 

原状回復工事は修繕費に該当する

原状回復工事は、入居時の状態へと戻すために行う工事であり、資産の機能を回復させることを目的としています。

資産の価値を向上させたり、新たな機能を追加するものではなく、単に元の状態に戻すための費用であるため、減価償却の対象とはならず、その年の経費として処理できます。

ただし、会計処理の際には、仕訳の適用欄に「原状回復費用」と明記することが重要です。

未記載の場合や、工事の内容が資産の価値を向上させるものと判断された場合には、修繕費ではなく固定資産として計上しなければならない可能性があります。

また、資産を廃棄する際には、通常の修繕費として処理するのではなく、「固定資産除却損」として計上します。

例えば、オフィスの移転に伴い、内装を解体して撤去した場合、その撤去にかかる費用は修繕費となりますが、撤去された内装の価値がまだ残っている場合、その残存価値分は固定資産除却損として処理しなければなりません。

 

オフィス移転の場合は賃貸かどうかに特に注意が必要

オフィスの移転に伴う内装工事も減価償却の対象です。

他の内装工事と同様に、工事内容に応じて耐用年数を判断します。

移転先のオフィスが自社所有か賃貸かによって、適用される耐用年数や会計処理の方法が異なるため、慎重な確認が必要です。

賃貸物件で内装工事を行う場合、耐用年数の設定には一定の条件があります。

賃借期間が明確に定められており、更新ができない契約であること、さらに工事費用に関して有益費の請求や買取請求ができない場合には、法定耐用年数ではなく賃貸期間を耐用年数として適用することが可能です。

これは、賃貸契約が終了するとともに内装も撤去されることが前提となるため、長期的な資産価値を持たないと判断されるからです。

このような条件を満たさない場合は、通常の内装工事と同様に、内装の種類や材質に応じた耐用年数を基準として減価償却を行う必要があります。

 

オフィスの内装工事にかかる費用

オフィスの内装工事にかかる費用は、物件の状態や施工内容によって大きく異なります。

居抜き物件とスケルトン物件における費用について詳しく見ていきましょう。

 

居抜き物件

居抜き物件は、前の入居者が使用していた内装や設備が残っているため、比較的低コストでオフィスの開設が可能です。

既存のレイアウトを活かしながら、一部の改修を行うことで効率的にオフィス環境を整えることができます。

坪単価は150,000円〜350,000円程度が目安です。

 

スケルトン物件

スケルトン物件は、内装や設備が一切ない状態のため、ゼロからの設計・施工が必要です。

その分、自由度が高く、自社のブランドイメージや働き方に合わせたオフィス空間を作ることが可能ですが、工事費用は高額になりやすいのが特徴です。

坪単価は200,000円〜400,000円程度が目安です。

 

オフィスの内装工事の見積もりの内訳

オフィスの内装工事の見積もりには、多くの項目が含まれます。

業者によって表記や細かい内容は異なりますが、主に以下のような工事項目に分けられます。

 

工事項目

内容

壁(間仕切)工事

会議室などの個室を作るための壁や間仕切りの設置工事

材質によってパーテーションやLGS・ボード工事と表記される場合がある

床工事

床材(タイルカーペット、フローリングなど)の変更を行う工事

内装仕上げ工事として扱われることもある

天井工事

天井材の仕様変更を行う工事

照明設備の取り付けや天井のデザイン変更が含まれる場合もある

造作工事

メーカー品では対応できないオーダーメイドの家具や設備の製作工事

例えば、リフレッシュスペースのベンチや特注の収納棚などが該当する

仮設工事

ビルの搬入経路やエレベーター、共用部を傷つけないようにシートやクッション材で養生・保護する工事

解体工事

居抜き物件への入居やレイアウト変更のために、既存の内装を解体・撤去する工事

内装仕上げ工事

床・天井以外の壁紙(クロス)やシート貼り、エントランスの装飾などを含む工事

空調設備工事

エアコンや換気設備の移設・増設に伴う工事

設備工事の一部として扱われることもある

防災設備工事

煙感知器、非常用照明、スプリンクラーなどの移設・増設工事

特に、個室を新設する際に必要となることが多い

衛生設備工事

トイレや給湯室など、水回りの設置・改修に関する工事

設備工事に分類される

電気工事

レイアウト変更に伴う床下コンセントの増設、間仕切り工事に伴う照明の移設・増設などを行う工事

通信設備工事とセットで扱われる場合もある

諸経費

現場作業に必要な費用や資材の運搬・搬入費、現場管理費などが含まれる

工事期間が長くなるほど金額が高くなるため、事前に内訳を確認することが重要

 

オフィスの内装工事費用を抑えるためのポイント

オフィスの内装工事にかかる費用を抑えるには、工事の進め方や選択する素材、依頼する業者の選定など、いくつかの工夫を取り入れることが重要です。

オフィスの内装工事費用を抑えるためのポイントについて詳しく見ていきましょう。

オフィス内装工事の種類と費用相場については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

シンプルなデザインや素材を選ぶ

費用を抑えるためには、シンプルなデザインや素材を選ぶことが重要です。

例えば、天井仕上げをあえて省略し、スケルトンの状態を活かすデザインにすることで、仕上げ材の費用を削減できます。

コンクリートの質感をそのまま活かしたインダストリアルなデザインが人気を集めており、スタイリッシュな雰囲気を演出しつつコストダウンが可能です。

 

複数の業者から相見積もりを取る

業者選びに関しては、複数の業者から見積もりを取得し、価格を比較することが大切です。

複数の見積もりを取ることで、各業者の価格設定やサービス内容の違いが明確になり、適正価格で工事を依頼できるようになります。

 

必要最低限の設備に絞る

最新の設備や高機能なシステムで揃えるのではなく、必要最低限の設備に絞ることで、大幅なコスト削減が可能です。

例えば、会議室の設置を検討する際、壁で完全に仕切るのではなく、パーテーションを活用すれば、施工費用を抑えつつ柔軟なレイアウト変更が可能になります。

 

オフィス内装工事費用の減価償却を理解して適切に処理しよう

オフィスの内装工事費用は、減価償却を適用することで、長期的に計画的な経費計上が可能となります。

自社所有か賃貸かによって耐用年数の考え方が異なるほか、改修工事の内容によっては固定資産として扱われる場合と修繕費として即時経費計上できる場合があります。

内装工事の費用を抑えるためには、必要な設備やデザインの優先順位を明確にし、相見積もりを活用して適正な価格で施工を依頼することがポイントです。

オフィスの内装工事を計画する際には税務処理のルールを理解し、適切に対応しましょう。

 

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この記事を書いた人

ワクリノ編集部スタッフ
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