ワクリノ特集
30坪のオフィスレイアウトを最適化するには?具体的なコツや方法を紹介
オフィスレイアウトの最適化は、業務効率や従業員の満足度、さらには企業文化の醸成にまで影響を与える重要な課題のひとつです。
どのようなオフィスを作り上げるかによって、快適で働きやすく、業績を上げられる会社づくりが大きく左右されます。
オフィスレイアウトが会社に与える影響の大きさは企業規模を問いません。
100坪を超えるような広いオフィスだけでなく、30坪程度のコンパクトなオフィスにおいても、適切なオフィスレイアウトの構築は企業の競争力強化に直結する重要な課題といえるでしょう。
この記事では、30坪オフィスが抱える一般的な課題から、具体的な改善方法、実際の成功事例まで、詳しく解説していきます。
目次
30坪のオフィスの抱える一般的な課題とは?
30坪程度のオフィスでは、スペースの制約から生じるさまざまな課題が存在します。
これらの課題を正確に理解して適切に対処することが、効率的で快適なワークスペース作りの第一歩です。以下では、特に重要な課題について詳しく見ていきましょう。
導線が確保しづらい
30坪程度のオフィスでは、デスクや什器を配置することで通路幅が狭くなりがちです。
狭い通路は社員の移動時間を増加させ、作業効率を低下させるだけでなく、緊急時の避難経路確保という安全面での課題も生じます。
通路幅を広げるためには、デスクや什器の配置やサイズを工夫し、通行に十分な空間を確保するのが望ましいでしょう。
具体的には、最低でも80cm以上の通路幅を確保することが重要です。特に頻繁に人の往来がある通路は、120cm程度の幅を確保することが望ましいとされています。
人数が増えたときの対応が難しい
レイアウトを変更しにくいオフィスでは、新入社員や臨時社員の席の確保が困難になるだけでなく、既存社員の作業スペースも圧迫される可能性があります。
この課題に対しては、可動式家具の導入やフリーアドレス制の採用など、オフィスの固定化を解消する対応が効果的です。
さらに、在宅勤務制度の導入やサテライトオフィスの活用など、働き方の多様化を図ることも有効な解決策となります。
会議室やリフレッシュスペースなどの確保がしづらい
30坪程度のオフィスで業務スペースを優先すると、打ち合わせやリフレッシュのためのスペースが不足しがちです。これは従業員のストレス増加につながるだけでなく、クリエイティブな発想や円滑なコミュニケーションを阻害する要因ともなります。
また、来客対応や商談のためのスペース確保も困難になることで、業務効率の低下につながるとも考えられるでしょう。
この課題に対しては、用途に応じて柔軟に活用できるマルチファンクションスペース(多用途スペース)やフリーアドレス制を導入することで、限られたスペースを異なる用途で利用しやすくなります。
圧迫感やストレスを感じやすい
狭いスペースでは圧迫感を感じやすく、従業員の心理的なストレスや集中力の低下を引き起こす可能性があります。
特に長時間のデスクワークを行う環境では、この問題は深刻化しやすいと考えられるでしょう。
この課題に対しては、自然光を取り入れる工夫や、適切な照明や家具の配置などが効果的です。
観葉植物の配置や、適度な温度・湿度管理も、快適なオフィス環境の整備に有効です。
壁面の色使いを工夫したり、アートを配置したりすることも、心理的な開放感を生み出すのに役立ちます。
プライバシーの確保が難しい
オープンスペース中心のオフィスは、電話での応対や機密性の高い作業を行う際に、プライバシーを確保しにくくなります。
情報セキュリティ上に配慮すべき業務の遂行が難しくなるため、会社全体の信用が問われるリスクも少なくありません。
この問題には、パーティションを活用した個室スペースや電話ブースの設置などで対応することができます。
さらに、社内のレイアウトや防音対策の工夫により、会話の内容が周囲に漏れにくい環境を整えられます。
オンライン会議などが快適に行えない可能性がある
オープンスペースでは周囲の会話や物音といった背景音が防ぎにくいため、オンライン会議に支障をきたす可能性があります。
また反対に、Web会議中の音声が周囲に伝わり、近くにいる人の業務を妨害するケースも考えられます。
この課題は、防音対策を施した会議室や個室ブースの設置が有効な対策となります。
また、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドセットや単一指向性マイクの導入も効果的です。
収納スペースが少ない
30坪程度の限られたオフィスでは十分な収納場所の確保が困難になる傾向があります。
デスク周りや共用スペースが煩雑になると、職場の美観に悪影響を与えるだけでなく、必要な書類や備品を探す時間が増加し、業務効率を低下させる原因にもなるでしょう。
この課題の解決には、壁面収納の活用や収納機能付きの家具の導入が効果的です。
またペーパーレス化の推進やクラウドストレージの活用など、デジタル化が有効な解決策になる可能性もあります。
小規模なオフィスについてのポイントをこちらで紹介しておりますので、
気になる方は下記をご参考ください。
「【事例紹介】小規模オフィスのデザインで意識すべきポイントとは?」
限られたスペースだからこそレイアウトが重要
30坪という限られたスペースでは、上記のような課題が同時多発的に発生します。
人員が増加する、荷物が減らせないといった事情を加味した上で課題を解決するためには、特にレイアウトの工夫が重要です。
まずは自社が直面している課題を明確にし、優先順位をつけながら効率的で快適な空間づくりを進めることが求められます。
また、従業員の働き方や業務内容の変化に応じて、柔軟にレイアウトを見直していく姿勢も大切です。
一度確定したレイアウトは、その後も常に正解であり続けるとは限りません。
限られたスペースだからこそ、空間の使い方をひとつひとつ慎重に検討し、最適化を図り続ける必要がある点は常に意識しておきましょう。
30坪のオフィスレイアウトを最適化する具体的な方法やコツ
30坪のオフィスを快適な環境に整えるためには、前述の通りレイアウトの最適化が必須となります。
ただし、最適なレイアウトは解決したい課題の優先度によって異なるため、自社にとって最も解決したい課題を洗い出すことが大切です。
従業員が働きやすいオフィスには何が必要で、どのように実現すればいいのか、順を追って検討を進めましょう。
ここでは、30坪のオフィスレイアウトを最適化するための具体的な検討方法についてご紹介します。
現場が抱える課題の洗い出し
効果的なレイアウト改善のために、まずは現場が抱えている課題を正確に把握することが不可欠です。
全従業員へのアンケートやヒアリングを通じて、実際に働く人々の声を集めることで、より実態に即した改善策を見出しましょう。
ヒアリング項目は、作業効率や快適性に関する満足度調査、具体的な改善要望などが対象です。
部署ごとの業務特性、個々の従業員の働き方、季節による温熱環境の変化、時間帯による利用状況の違いなどにより、従業員から挙げられる課題が変わります。
全く正反対の意見が集まる可能性もありますが、今後レイアウトの方針を具体的に検討する際に必要な材料となりますので、まずは幅広く意見を募ることが重要です。
オフィスレイアウトで重視する優先度を決める
従業員から寄せられた意見を基に、レイアウトの方針を検討します。
オフィスのレイアウトに求められる代表的な要素は「作業」「コミュニケーション」「デザイン性」の3つです。自社のオフィスにおいてどの要素を優先すべきなのか、アンケート結果から検討を進めましょう。
作業重視
作業効率を重視する場合は、個人の集中作業スペースを確保することが重要です。
デスク間のパーティション設置や、十分な作業面積の確保、適切な照明計画などが必要となります。デュアルディスプレイなどのIT機器の設置が必要となる場合は、個々人への広めのスペースの割り当てが必須です。
また、プリンターなどの共有機器の配置や機密文書の保管場所の確保にも配慮が必要です。
もし、オンラインミーティングを活用しているようなら、音響に配慮した個室ブースの設置も検討すべきでしょう。
コミュニケーション重視
従業員間のコミュニケーションを促進したい場合は、個人へのスペース割り当てや仕切りがないオープンな構成が有効です。
定位置を決めないフリーアドレス制や、カフェテリア風の打ち合わせスペースなどを導入することで、オフィスにいながら開放感を感じられます。
部署間の交流促進を重視するなら、従業員全員が利用できる共用のリフレッシュスペースを中心に座席を配置するといった方法も考えられます。
ただし、過度にオープンな環境は逆にストレスの原因となる可能性がある点には注意が必要です。
個人の座席とは別にフリースペースを設けたり、リフレッシュスペースにソファを採用したりするなど、適度にオンオフを切り替えられる環境を整えるという選択肢もあります。
デザイン性重視
デザイン性重視のオフィスは、企業イメージの向上や来客者への印象を考慮したレイアウトが重視されます。
特に目に付きやすい受付周りや応接スペースは、企業のブランドイメージを体現する空間として、細部まで作り込むことが望ましいでしょう。
一方で、デザイン性を重視するあまりに従業員の作業効率を無視したデザインを採用するのは避けるべきです。
視覚的な美しさを持つ統一感のあるオフィスを意識しつつ、従業員の快適性にも配慮したレイアウトを選択しましょう。
こちらの記事では、オフィスのリノベーションをする際に重要なポイントを解説しておりますので気になる方はこちらをご覧ください。
「【事例付】おしゃれなオフィス内装紹介!工事を成功させる5つのポイント解説」
オフィスレイアウトの検討
オフィスにおいて重視したい要素の優先度を基に、具体的なオフィスレイアウトを検討しましょう。
実際にレイアウトを進めはじめると、あれもこれもとさまざまな要素を盛り込みたくなるものです。
もしレイアウトの検討に行き詰まるようなら、当初に定めた優先度に立ち返り、理想のオフィスをイメージし直すとよいでしょう。
動線を意識したゾーニング
快適なオフィスは、従業員が移動する動線を意識したゾーニングが適切に行われています。
限られたスペースを執務エリア、会議スペース、リフレッシュゾーンなどの用途別に区分けし、それぞれのゾーンをスムーズに移動できる動線で結ぶことで、業務効率の向上が期待できます。
特に、頻繁に往来が発生する場所の通路の幅や、会話や作業音などの騒音が発生しやすいエリアは、優先的な配置が必要です。
建築基準法や消防法など、通路の幅や仕切りの位置を規制する法令の遵守も求められます。
デッドスペースの有効活用
同じ30坪であっても、オフィスによって柱や階段の位置が異なります。
執務室や会議スペースとして使いにくいスペースがあるようなら、その他の用途で活用するような創意工夫が求められます。
階段下や柱付近、中途半端な広さの壁際などがデッドスペースになりやすい場所です。
もし執務用のデスクよりも小さな机を置ける程度のスペースがあるなら、オンラインミーティングや電話用のブースとして設計するという方法があります。
広いスペースは優先的に執務エリアに割り当て、狭い柱付近に収納をまとめてもよいでしょう。
デッドスペースを有効活用できているオフィスほど、実際の坪数以上に広さを感じやすくなります。
限られたスペースを無駄にしないよう、アイデアを駆使したレイアウトを考案しましょう。
柔軟性や拡張性など将来に備える工夫
人員の増減や事業拡大により、オフィスのレイアウト変更が必要になる場合があります。
いざというときにわずかな労力で環境の変化に対応できるよう、柔軟性や拡張性を持ったレイアウトを意識しましょう。
可動式の家具やパーティション、組み替えで用途を拡張できるモジュール家具を導入することで、将来的なレイアウト変更にも柔軟に対応しやすくなります。
電源や通信用のケーブルも、後から増やせるように余裕を持った設計にしておくのが無難です。
将来的な事業拡大や働き方の変化にも対応できるよう、ある程度の余白を残しておくような設計が望ましいでしょう。
家具選び
小規模なオフィスにおいて、家具選びはオフィスの快適性を左右する重要な要素です。
大きなオフィス家具はスペースを取るうえ、事業規模や人員に応じた拡大・縮小がしにくいため、小さなオフィスで積極的に採用するのは避けた方がよいでしょう。
30坪程度のオフィスなら、省スペース性と機能性を兼ね備えた家具を選択することが重要です。
収納付きや天板の伸長機能付きデスクのような機能性の高い家具は、他の家具の用途を兼ね備えることができるため、家具がオフィスを占める割合を下げやすくなります。
また、折りたたみ式の会議テーブルや重ねられる軽量の椅子を採用すれば、会議室スペースをさまざまな用途に流用しやすくなるでしょう。
30坪程度のオフィスレイアウトを最適化している事例
小規模オフィスを利用する企業の中には、空間を効率良く使用し、居心地のいいオフィスを構築しているところがあります。
30坪に満たないオフィスのレイアウト実例から、限られたスペースの有効活用方法を見てみましょう。
事例1:22坪 新規開設、ラグジュアリーな弁護士事務所
見晴らしのよい高層階にオフィスを構える弁護士事務所の事例です。
22坪の空間の手前にエントランスと相談室、奥に執務室を構えるレイアウトを採用しています。
エントランスには壁一面の日光が注ぎ込み、明るく爽やかな空間を実現。
受付カウンターからは奥の執務室まで見通せるため、実際の数字以上に広さと奥行きを感じさせます。
隣接する相談室の上部はガラスを入れずに解放することで、開放感の演出と空調の効率アップを両立しました。
執務室には窓の外の緑を楽しめるように3席のデスクがゆったりと配置されています。
家具は白い壁面と対を成す黒を基調としたものが多く、シンプルなモノトーンの空間が落ち着いた雰囲気を感じさせます。
事例2:22.5坪 増員を踏まえたフレキシブルオフィス
医療福祉サービスを提供する企業のオフィス事例です。
22.5坪のオフィスで訪問看護ステーションとしての認可要項をクリアし、デザインと働きやすさも実現しています。
面談スペースを入口の近くに配置し、外部の方が執務室を通らずに面談スペースへ到着できるようにしており、 パーティションを設置して周りの目線を気にすることなく打ち合わせできる配慮がされています。
また、ローパーティションを使用することで、上部まで仕切られていないからこその解放感ある空間となっています。
将来的な増員も想定して、あらかじめ自由に変更ができるようにキャスター付きデスクを選定。
島型に集めて打合せデスクとして利用したり、増員した際にはデスクを離してレイアウトすることで4面全部に人が座れるように工夫しています。
事例3:15坪 ICT×リノベーションを実現させたオフィス空間
研究開発事業を行う企業のオフィス事例です。
わずか15坪の広さながら、パーティションを効果的に活用し、エントランス・ミーティングルーム・執務室のゾーニングを実現しています。
オフィス内の家具・什器は黒とダークブラウンを中心としたモノトーン調でまとめ、モダンなムードで統一しています。
各デスクはランダム性のある配置となっており、各従業員の独立性を担保。集中力が求められる業務の効率アップに寄与しています。
ミーティングルームは曇りガラスのパーティションで囲むことで、プライバシー性と採光性が両立された空間に。
オフィスの各所にはグリーンを配置し、圧迫感のない空間を演出しています。
30坪の限られたオフィスを最適化するなら専門家に相談するのも1つの方法
オフィスレイアウトの最適化は、業務効率や従業員の満足度に直結する重要な経営課題です。
30坪という限られたスペースを最大限に活用するためには、オフィスに求める要素と優先度を明確にすることが求められます。
自社にとって有益なオフィスを作り上げるために必要なものを洗い出し、理想のオフィスを作り上げてみてはいかがでしょうか。
一方で、オフィスレイアウトの最適化には専門的な知識が求められる側面があります。
最新のオフィスデザインのトレンドや空間活用のノウハウ、最新法規制の動向などを踏まえたオフィスレイアウトを行うのは簡単なことではありません。
オフィスレイアウトの方針に悩むようなら、専門家のアドバイスを受けることも効果的な選択肢のひとつです。
30坪程度の限られた空間であっても、適切なレイアウトを行えば、働きやすい理想のオフィスを実現できます。ぜひ専門家の手を借りながら、自社にとってベストなオフィスを構築してください。
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この記事を書いた人
- ワクリノ編集部スタッフ
- 働き方の進化をコンセプトに、オフィス改善のコンセプト設計から、効率的な運用設計、レイアウトプランニングなど、オフィスの新しい”働きやすさ”と“生産性の向上”を創造し提案していきます。